わたしたちはこれまで、演劇をはじめ、さまざまなアートの手法を取り入れたワークショップなどを学校・教育関係者に紹介するとともに、ファシリテーターやコーディネーターなど文化芸術関係者のネットワークを構築し、子どもの発想を生かし育てる活動を取り入れ、主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善に生かせるよう、支援を進めて参りました。そしてこのたび、さらなる未来を共につくるために「表現コミュニケーションLab.」を立ち上げました。
《今、なぜ演劇的手法(シアターエデュケーション)が必要なのか》
「AIで人間の仕事の49%がなくなる」という研究結果(野村総研とオックスフォード大学の共同研究)が2015年に発表されました。変動が続き、先がみえない中、今を生き、未来の社会を担う子どもたち・青少年が、社会の中で、豊かに生きていくには『自ら感じ考え、動くことのできる力』『共有し、わかち合う力』が必要です。
そのためには、まず自分が感じていることを知り、その感情を『表現』できること。大量のデータを持っているAIに対して、『なんか好き』『なんかいやだ』というような感性(身体感覚)は人間特有のものです。
また人は自分だけでなく、他者と『関わりながら生きていくこと』が必要であるため、他者と話し、聴き、ともに考える『コミュニケーション(対話)』することができること、が重要です。
そして、何よりも『自己肯定感』を持ち、「自分で大丈夫だ」という『自信』をつけることが、大きな鍵になります。
体験を通して他者と対話する力を育んでいくことは『生きる力』につながっていきます。
以上のことを育むために自らの『身体・心・頭』を使う演劇的手法(シアターエデュケーション)は非常に有効だと考えます。演劇的手法は答えのない世界に対し、自分たちで考え、他者と対話を重ねながら納得できる解を導き出すことを体験していきます。
《演劇的手法(シアターエデュケーション)で育むことができる力》
【共感性】【感受性】:自分が何を感じるのか、を知ること。また人の痛み、感覚に寄り添うことができる力。
【思考力】【発想力】: 変化やアクシデントに対応できる力。人生を豊かにする感性が育つ。
【柔軟性】【順応性】: 他者(グループ)で表現、創作をすることで、違う意見や興味を受け入れながらどうひとつの形にしていくか、を身体・心・頭すべてを使って体験する。危機管理能力にもつながる。
【自分を表現し、自分を知ること】:
自分のアイデンティティ、好きなことを知る。将来の夢につながる。
自分の存在が社会で大切な役割を果たすことを知る、自己効力感を育む
【違いへの知識をもち、違いをたたえる(多様性の尊重)】:
多様な価値観、バックグラウンド、性格の人々が生きる社会で、「違っていい」ということを実感できる人は、自分自身に『自信』を持ち、『自己肯定』ができ、他者を受け入れる力がある。社会的弱者とともに助け合う力が育つ。
表現コミュニケーションLab.では、演劇的手法を活用した「表現コミュニケーション教育」に着目し、学校現場の中で、継続的かつ段階的に実践することを提案いたします。
表現コミュニケーションLab.
小山裕嗣・中澤聖子・小出恵